製造業ブログ

公開日:2026.4.29

【開発秘話】流行りの「SaaS連携」を捨て、私たちが部門別採算を極める統合クラウドERPをゼロからつくった理由

「デジタルトランスフォーメーション(DX)」「クラウド化」「SaaSの導入」。連日のように業界紙やビジネスメディアで踊るこれらの言葉に、焦りを感じている方は少なくないはずです。現代の中小製造業は、深刻な労働力不足、高齢化の進展、そして原材料費やエネルギー価格の高騰という複合的な外部環境の脅威に直面しています。

特に従業員数が30名規模(年商5億円クラス)に差し掛かると、経営トップの統率力だけで全体を牽引できる限界点に達します。専任の情報システム部門を抱える余裕はないものの、営業・製造・バックオフィス間の業務連携の複雑さは大企業に迫っているのが現実です。現場の作業日報は紙で回ってきてエクセルに転記、営業はスプレッドシートで案件管理、経理は月末に別の会計ソフトへ手打ち……。中小製造業のIT担当者、そして日々現場と経営の間で汗を流し、部門別管理会計や現場の採算意識向上を目指している経営層にとって、勘と経験に頼った大まかな収支管理からの脱却は「待ったなし」の経営課題です。

私たちも、全く同じ悩みを抱えていました。この状況を打破するために、当初は世間で主流となっている「各業務領域に特化した複数のクラウドサービス(SaaS)を連携ツールで組み合わせる」アプローチ、いわゆる「ベスト・オブ・ブリード型」のシステム構成を本気で検討しました。

しかし、結果として私たちはその道を捨てました。そして、「PSI VISION(サイビジョン)」という独自の統合型クラウドシステムを、ゼロから創り上げる決断を下したのです。

本稿では、私たちがなぜ「SaaSの組み合わせ」という主流のアプローチを諦めたのか。そして、「年商5億円・30人規模」という基準で算出した、極限までシビアで現実的なコスト・便益のリサーチ結果を公開します。

※なお、本記事は「PSI VISION」の開発・提供元としての視点を含みます。他社のSaaSサービス等の比較については、公表されている情報を基に予想される料金でシミュレーションしており、実際の契約条件や利用形態により異なる場合があります。公平な比較を期しておりますが、自社システムについて語る性質上、利益相反の立場にあることをあらかじめご承知おきください。一社の中小製造業が試行錯誤の末に導き出した「ひとつの最適解」としてお読みいただければ幸いです。

第1章:SaaS連携の「理想と現実」〜シビアなコスト試算が見せた壁〜

システム刷新を検討し始めた当初、私たちは「各分野で一番優れたソフト」を組み合わせるのが最善だと信じていました。しかし、30人規模の全社員にすべてのSaaSのライセンスを付与すると、それだけで月々の支払いは莫大な額になります。

そこで私たちは、SaaS連携構成において「全員がすべてのアカウントを持つ」という無駄を徹底的に排し、各部門が必要とする最低限のライセンスのみを契約する「部門最適化(シビアなコスト削減)」を前提に構成を練り直しました。

部門別ライセンス最適化による月額費用の内訳

30人(営業5名、製造20名、管理5名)の組織において、徹底的に絞り込んだ構成は以下の通りです。

  • 営業部門(5名): Salesforce(SFA/CRM)のみを利用。月額約90,000円。

  • 製造部門(20名): TECHS-BK(生産管理)を現場限定に絞り込んで利用。月額約140,000円。

  • 管理部門(5名): freee会計(プロフェッショナル)で約40,000円、楽楽販売(販売管理)で約60,000円。

  • 全社基盤(30名): ジョブカン(勤怠管理)で約12,000円、keyence RPA(連携基盤)で約45,000円。

このようにアカウントを部門ごとに切り詰めた結果、最適化後のSaaS基本運用費は月額約38.7万円(年間約464万円)まで圧縮できました。

「隠れた維持コスト」の恐怖

しかし、システムは導入して終わりではありません。SaaSのライセンス数を絞り込んだとしても、SalesforceとTECHS-BK等の異なるデータベース間で、RPAやAPIを用いてデータ連携を維持する複雑さは変わりません。むしろ、ツールを分断するほど、データの整合性を保つための「見えないコスト」が膨らみます。

SaaS側で仕様変更があれば、スクリプトの改修やエラー修復が必要になります。私たちはこのコストも最大限努力して抑え込んだと仮定しましたが、それでも年間80万円(5年間で400万円)の連携維持予備費が不可避であると見積もりました。

初期費用(約300万円)、基本ライセンス費、そして隠れた維持コストを合わせた、複数SaaS連携構成の5年間総所有コスト(TCO)は約2,942万円となりました。

一方、私たちが開発した「PSI VISION」は、全員が参加することで価値を生む全社一括導入プランです。保守費も包含されており、5年間TCOは2,727万1,200円。極限までアカウントを削ぎ落としたSaaS構成であっても、単一データベースであるPSI VISIONのコスト優位性を覆すことはできなかったのです。


第2章:SaaS最適化のジレンマ〜データの分断が奪う「本当の利益」〜

私たちが本当にやりたかったのは、ITツールのパズルを解くことではありません。現場の稼ぐ力を最大化し、小集団ごとの独立採算制を確立することです。そのためには、「今の自分の作業が、会社にどれだけの利益をもたらしているか」をリアルタイムで把握できる仕組みが必要不可欠でした。

システム導入がもたらす便益(利益増加効果)について、私たちはベンダーが提示する理想論を完全に排除し、「現場が最低限これだけは実現できる」という極めてシビアな前提条件で算出しました(※労働時間単価1,875円/時間)。

統合システムにおける「極限までシビアな年間便益」(合計715万円)

  • バックオフィスの手作業削減: 経理・事務(5名)のデータ突合などの二重手間を「月間20時間だけ」削減できたとして、年間2,250,000円。

  • 営業・現場の入力・確認削減: 営業・製造(25名)の図面探しや転記作業などの無駄を「1日わずか10分」削減できたとして、年間1,800,000円。

  • ステルス赤字のリアルタイム回避: コストメーターで赤字を察知し、売上全体の「わずか0.5%(250万円分)だけ」回避できたとして、年間2,500,000円。

  • トラブル・不良品ロスの削減: 手戻りや廃棄ロスを会社全体で「月額5万円」だけ削減できたとして、年間600,000円。

データが入力された瞬間に原価や利益が可視化される「PSI VISION」の環境下であれば、現場がすぐに行動を変え、これら合計年間715万円の便益創出は十分に現実的な目標です。

SaaS構成における「致命的な目減り」

しかし、複数SaaS連携構成の場合はどうでしょうか。コスト削減のために部門ごとにツールを分断した結果、データの統合にはRPAや夜間バッチ処理が必須となります。

この「情報のタイムラグ」は致命的です。1日遅れで届く数字では、現場はその瞬間の判断を変えることができません。赤字案件の回避や不良品ロスの削減効果が実質的に20%以上目減りするとシビアに仮定した場合、SaaS構成での実質年間便益は560万円(▲155万円の目減り)にまで低下してしまいます。

コスト削減のためのライセンス分断が、皮肉にもデータの分断と遅延を生み、最大の目的である「利益」を奪ってしまう。これが、私たちが突き当たった大きなジレンマでした。


第3章:公平かつ極限までシビアな「投資回収シミュレーション」の真実

ここまでの「TCO」と「便益」のシビアな試算結果を持ち寄り、5年間のキャッシュフロー推移を比較・検証しました。その結果は、経営判断を決定づけるほど明確なものでした。

【5年間TCO比較と投資回収の現実】

比較項目

PSI VISION(統合型)

複数SaaS連携(部門最適化)

初期導入関連費

3,551,000円

約 3,000,000円

5年間 総所有コスト(TCO)

27,271,200円

約 29,420,000円

年間機能便益(想定利益)

+ 7,150,000円

+ 5,600,000円

投資回収完了時期

約1.6年(2年目の中盤)

未回収(実質的な塩漬け)

5年目末 累積CF(最終利益)

+ 8,478,800円

▲ 1,420,000円

PSI VISIONの評価:約1.6年での堅実な回収モデル

便益を「1日10分の時短」「売上のわずか0.5%の赤字回避」という極めて低いハードルに設定したにもかかわらず、PSI VISIONは約1.6年というスピードで堅実に投資回収を完了します。システムの一元化と、追加費用が発生しにくい保守構造が、企業財務を確実に保護し、利益体質への転換を可能にすることを証明しています。

複数SaaS連携構成の評価:塩漬けリスクの顕在化

一方、SaaS構成については、部門ごとにライセンスを最適化して初期費用を抑えたにもかかわらず、システムの基本維持費と連携予備費が重くのしかかります。目減りした実質便益が維持コストをかろうじて上回る程度に留まり、5年経過しても142万円の赤字が残存する「実質的な塩漬け状態」に陥るリスクが高いことが判明しました。

SaaSのライセンスを部門ごとに最適化(コスト削減)するアプローチは、一見賢い選択に見えますが、データの分断による「便益の低下」を招き、結果として投資回収を事実上不可能にする恐れがあるのです。


第4章:スクラッチから創る「共有クラウド」という決断

「データが最初からひとつ屋根の下にある、統合型のシステムでなければ、私たちがやりたい現場の採算意識の向上は実現できない」。これが、私たちが「流行りのSaaS連携」を捨てた明確な理由です。

しかし、自社のためだけに理想のシステムを完全なオーダーメイド(フルスクラッチ)で作れば、数千万円近い開発費がかかります。30人規模の中小企業には到底負担できる金額ではありません。

そこで私たちが辿り着いたのが、「他の中小製造業の会社様と一緒にシステムを育てていく、共有型のクラウドシステム」というモデルでした。

PSI VISIONは、強固なデータベース基盤の上に、私たちが製造現場で培った「業務のベストプラクティス」を標準実装しています。営業の見積もり作成から、製造現場のタブレットでの実績入力、納品、請求、そして部門別の管理会計まで。この一連のシステムをクラウド上でパッケージ化し、複数の企業で「共有」して利用する形態をとりました。

このアプローチの最大のメリットは、一社では抱えきれない開発コストを分散できることと、他社の優れた運用ノウハウがシステムに反映されることです。

導入いただいた企業様から、「タブレットのボタン配置」「不良報告の入力手順」といった現場の生の要望をいただき、それを標準機能としてアップデートして全体に共有する。特定のベンダーが押し付ける仕様ではなく、「現場で手を動かす人たちが共に育てていくシステム」。それが、PSI VISIONの姿です。


最後に:部門別管理会計への舵取り〜利益を生み出す未来へ〜

「流行りのツールを連携させれば、なんとかなる」という淡い期待は、いったん脇に置いてみませんか。

30人規模の製造業にとって真に必要なのは、洗練された個別の機能ではなく、「会社の端から端まで、ひとつの太いパイプで数字が流れていること」です。私たちが実施したシビアなシミュレーションが示す通り、理想論を排した経営視点から見ても、単一データベースによるオールインワン構成を採用し、部門間の壁を完全に取り払う戦略こそが、財務安全性と業務改善の実効性を両立する唯一の合理的な選択肢です。

足元の1円、1分を徹底的に管理し、製造業の生命線である「付加価値」をデジタルの力で最大化する。

もし、この「リアルタイムな経営判断」への想いに共感していただけるならば、私たちはシステムの提供者としてだけでなく、同じ製造業を生き抜く仲間として、貴社と共にPSI VISIONを育てていきたいと強く願っています。一過性のIT投資ではなく、10年先も会社を支え続ける「経営の武器」を、今ここで手にしてみませんか。

【PSI VISIONの詳細・お問い合わせはこちら】

「自社の場合はどれくらいの投資回収効果があるのか?」「実際の現場での使い勝手はどうなのか?」 そんな疑問をお持ちの皆様へ、本記事で使用した『コスト比較検証・詳細シミュレーションシート』の配布と、実際の操作画面をご覧いただけるオンラインデモを実施しています。

数字に強い現場、利益が見える経営への第一歩を、私たちと一緒に踏み出しましょう。

[▶︎ PSI VISIONの機能詳細・資料請求はこちら]

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この記事の監修者

藤井 聡|代表取締役

業務印刷の未来を探求し、中小製造業向けのALL IN ONEクラウドERPやAIO向けLP制作ツールをリリース。2019年に社内の事務職ゼロを達成し、クラウド実践大賞岡山大会で発表。京セラの稲盛和夫氏とゲーム作家の米光一成氏の手法を取り入れた会社の仕組みづくりを推進中。

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