製造業ブログ

公開日:2026.4.21

地方のクリエイティブ業界が「下請けの泥沼」から抜け出すためのひとつの提案。自走化DXとESGが交差する仕組みづくり

せっかく作ったホームページが更新されない。良かれと思ったサポートが、いつの間にか「都合の良い下請け」としての疲弊を生んでしまう——。地方でクリエイティブやITに関わる企業なら、一度はこんなジレンマを感じたことがあるのではないでしょうか。 本稿では、私たち自身が実際にその泥沼でもがき、そこから抜け出すために模索してきた「ひとつの仕組み」についてお話しします。

  • お客様がご自身の言葉で無理なく発信できる「AIコンテンツファクトリー」

  • 社内のIT人材不足を補い合う「障害者DXチーム」とのあたたかな協働

  • 現場で汗をかく人がしっかり報われる「原価公開と利益配分」のルール

これらを組み合わせることで、単なる業務効率化(DX)にとどまらず、社会的な意義(ESG)も自然と日々のビジネスに溶け込んでいきます。誰かが無理をして支えるのではなく、お互いが心穏やかに成長していける新しいパートナーシップの形について、少しだけ立ち止まって一緒に考えてみませんか。

はじめに:私たちが直面していた「下請けのジレンマ」という現実

「立派なホームページを作って納品したけれど、その後まったく更新されていない」

「お客様の素晴らしい技術をもっと世に広めたいのに、うまく形にならない」

私たちのような地方の印刷会社やWeb制作会社、デザイン会社といったクリエイティブをなりわいとする企業は、長年こうしたもどかしさを抱えてきました。日本各地には、世界に誇れるような技術を持つ町工場やB2B企業が数多く存在します。しかし、「自社の価値を言葉にして届ける」という発信の部分において、少しばかりお手伝いが足りていないのではないか。そんな課題意識から、私たちも日々お客様のサポートに奔走してきました。

ただ、そのサポートを続けていく中で、私たち自身がある種の構造的なジレンマ、いわゆる「労働集約型の下請け構造」の渦中にいることにも気づき始めました。

良かれと思って最新のシステムを取り入れたWebサイトを制作し、お渡しする。しかし、お客様の現場には、それを日常的に運用していく「時間」も「ITリテラシー」も不足していることが少なくありません。結果としてどうなるか。「よく分からないから、ついでにここも更新しておいてよ」と頼まれ、いつしか私たちが専属の担当者のように、本来の契約範囲を超えて細かな対応を続けることになってしまいます。

どれだけ真摯に案件に向き合い、夜遅くまで対応を続けても、お互いに余裕がなくなり、現場の疲労だけが静かに溜まっていく。誰も悪気はないのに、少しずつ双方が疲弊してしまうこの関係性は、どこかで見直す時期に来ているのではないか。私たち自身がその泥沼でもがいていたからこそ、そう強く感じるようになりました。

本稿では、こうした状況を少しでも良い方向へ変え、地方におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)とESG(環境・社会・ガバナンス)を無理なく両立させるための、次世代のビジネスモデルのアイデアについて、私たちサービス提供側の視点から、ひとつの提案としてお話ししてみたいと思います。


「代行」から「自走化のサポート」へ、私たちの立ち位置をずらす

このジレンマから抜け出すために、私たちはまず、自分たちのサービスのあり方を少しだけ見直してみることにしました。それは、「私たちがすべて代わりに作ります」というこれまでの「代行」のアプローチから、少し距離を置くという決断です。

代わりに目指したのは、「お客様ご自身で発信できるようになるまで、私たちが伴走する」という、自走化支援へのシフトです。いわば、魚を釣って差し上げる「便利な外注先」から、一緒に魚の釣り方を練習する「伴走型のサポーター」へと、自らの立ち位置をスライドさせてみる試みでした。

もちろん、最初からスムーズに進んだわけではありません。「自分たちで発信を」とお願いしても、現場の皆様からは「日々の業務が忙しくて時間がない」「そもそも文章を書くのが苦手で、何から手をつけていいか分からない」という率直な声が返ってきます。現代はAIが身近になり、便利なツールも増えましたが、「このAIを使ってご自身で書いてみてください」とツールだけをお渡ししても、おそらく定着することはありませんでした。

汎用的なAIツールを使いこなすには、どんな指示を出せばいいのかという専門的なコツがいります。現場の職人さんや営業担当者の方は、自社の技術の奥深さや製品へのこだわりといった、素晴らしい「暗黙知」を心の中に持っていらっしゃいます。この大切な想いを、いかにして負担なく引き出し、目に見えるコンテンツへと形にしていくお手伝いができるか。それが、私たちが提供すべき本当の価値だと考えるようになりました。


心理的なハードルを和らげる「AIコンテンツファクトリー」の提供

現場の皆様が抱える「書くことへの抵抗感」を和らげ、頭の中にある生きたノウハウを資産に変えていくための一つの解決策として、私たちは「AIコンテンツファクトリー」というサービスをご用意してみました。

このサービスの一番の工夫は、「書く」ことから「喋る」ことへ、アプローチの入り口を切り替えた点にあります。多忙な現場の方々に、パソコンの前でキーボードと睨めっこしていただく必要はありません。ただ手元のスマートフォンに向かって、今日の現場での気づきや、技術的な工夫、あるいは少し難しかったお客様からのご要望などを、いつもの言葉でそのまま話していただくだけで良いのです。

この「AIコンテンツファクトリー」の裏側では、私たちがあらかじめ丁寧にチューニングを施したAIが優しくサポートします。導入の段階で、自社の「経営哲学」や「読んでほしいお客様のイメージ」、「ブログやチラシといった出力したい形式」をAIのシステムにしっかりと組み込んでおきます。

あとはお客様が話すだけで、AIが録音された音声を読み解き、発言の奥にある意図や熱意をすくい上げ、自社のカラーに合った自然な文章へと整えてくれます。人間が一番リラックスして行える「話す」というインターフェースを活用することで、言語化に対する心理的・物理的な壁を、大きく減らすことができるのではないかと期待しています。

現場の飾らない「生の声」と、私たちが設計した「AIのまとめる力」が重なることで、特別な文章のトレーニングを受けていなくても、実用的なコンテンツへと形にしやすくなります。これが、お客様に無理なく発信を続けていただくための、ひとつの土台になると考えています。


「障害者DXチーム」との協働という新しい選択肢

ただ、こうした仕組みをご提供するにあたり、私たちサービス提供側にもひとつの現実的な壁がありました。それは、「このシステムを継続的に支え、お客様を裏側からサポートしていくためのIT人材が、社内に十分にはいない」という地方企業ならではの悩みです。

かといって、システムの運用や保守をすべて都市部の大きなITベンダーにお願いしてしまうと、コストが膨らみ、お客様に手頃な価格でサービスをご提供し続けることが難しくなってしまいます。

この課題を補い合うためのひとつのアイデアとして私たちがたどり着いたのが、専門のデジタルトレーニングを受けた「障害者DXチーム」とパートナーシップを結ぶ、という仕組みでした。

「AIコンテンツファクトリー」の初期設定や、毎月の細かなデータ更新、簡単なレポートの作成など、定型的でありながら丁寧な作業が求められる裏方の業務を、この専門チームにお願いしてみるのです。彼らは独自のトレーニングを積んでおり、非常に実直で質の高いサポートを提供してくださいます。

このような適材適所の分担ができれば、私たちフロントに立つ営業担当者やディレクターは、裏側の複雑なデータ処理に追われることがなくなります。その分、現場に足を運んでお客様のお話をじっくり聞き、悩みに寄り添うという、人間にしかできないコミュニケーションに時間と心を注ぐことができます。

得意なことを持ち寄り、苦手な部分を補い合う。この体制は、人材不足に悩む私たち地方のIT・クリエイティブ企業が、無理なく良質なサービスを提供し続けるための、ひとつの打開策になるのではないかと感じています。


原価を共有し、現場の頑張りに報いる利益構造

私たちは現在、この「AIコンテンツファクトリー」を中心とした自走化支援のモデルを、同業である地方の印刷会社様や制作会社様にもパートナーとしてご活用いただけるよう、取り組みを広げています。

その際、企業間で協力していく上でどうしても生まれがちな「不透明さ」をなくしたいと考えました。「システム提供側である私たちが、無理な利益を取っているのではないか」といった不安は、一緒にビジネスを育てていく上で少し寂しいものです。

そこで、少し勇気がいることではありましたが、「原価をあらかじめオープンにする」というアプローチをとることにしました。

パートナーとしてご契約を結ぶ前に、システムの維持費や、裏方として動く障害者DXチームへのサポート費など、実際に発生している原価を、隠さずにお伝えしています。

ここで私たちが大切にしているのは、「実際に現場で汗をかく方の利益を最も厚くする」という利益配分の思想です。

「この仕組みをしっかり維持し、サポートチームに適正な報酬をお渡しするために、これだけの費用がかかっています」と率直にお話しし、それ以外の利益は、実際にお客様の矢面に立って日々サポートに奔走してくださるパートナー企業様に、より多く還元される構造にしています。

お金の流れが透明であり、現場の頑張りがしっかり報われる仕組みであれば、「不当に搾取されている」というような誤解は生まれにくく、「一緒に地方の企業を元気にしていこう」という穏やかな納得感につながりやすくなります。自社のノウハウを隠して利益を守ろうとするよりも、あえて内情を共有し、共に汗をかく仲間を大切にすることで、結果的に長くお付き合いできる信頼関係が育まれるのではないかと考えています。

そしてその信頼関係が、単発の制作案件ではなく、お客様が自走できるようになるまで寄り添い続ける、安定したビジネスの土台づくりに役立つはずです。


ビジネスの日常に溶け込むESG

この「AIコンテンツファクトリー」をご提供する仕組みについて、私たちが最も大切にしているのは、ESG(環境・社会・ガバナンス)の視点が、特別なプロジェクトとしてではなく、日々のビジネスの「当たり前の流れ」の中に溶け込んでいる点です。

社会貢献というと、利益が出た時に寄付をしたり、イベントを行ったりといった形も素晴らしいですが、業績によっては継続が難しくなることもあります。

しかし、今回ご提案しているモデルであれば、少し違った形を描けるかもしれません。

  1. お客様の自走化支援:お客様自身が言葉を紡ぎ、本来の魅力を発信していただくお手伝いをする。

  2. クリエイティブ業界の安定化:私たちやパートナー企業が、無理な下請け構造から少しずつ距離を置き、継続的な関係性を築く。

  3. 多様な働き方の創出:システムを裏側で支える「障害者DXチーム」へ、IT領域での継続的なお仕事を生み出す。

これらは別々の活動ではなく、ひとつのサービスの裏側で自然に連携して回るように設計されています。

サポートチームの丁寧な仕事がなければお客様はツールを使いこなせず、お客様が発信を続けられなければ私たちのビジネスも成り立ちません。社会的な課題へのアプローチが、無理のない範囲で自社のビジネスを前へ進める力にもなる。これこそが、私たちが目指したい持続可能なビジネスのひとつの形です。


おわりに:少しずつ、新しい関係性を築くために

AIというデジタルの力と、人と人が対話するというアナログな温かさ。そして、自社だけですべてを抱え込まず、多様な方々と協力して価値を生み出していく柔軟な姿勢。

新しいツールを導入して作業を早く終わらせることだけがDXではないように思います。私たち自身が「誰にどう貢献できるのか」を見つめ直し、関わる人たちが少しでも心穏やかに、共に成長していけるような仕組みを考えてみる。そのプロセス自体が、地方の中小企業がこれからの時代を歩んでいくための、ひとつのヒントになるかもしれません。

「言われた通りに作るだけ」の慌ただしい日々から、少しだけ顔を上げてみる。自社の想い、お客様の言葉にならない熱意、そしてサポートしてくれる多様なチームの力を、「AIコンテンツファクトリー」という仕組みでそっとつなぎ合わせてみる。

そうした小さな一歩の積み重ねが、これまでの窮屈な関係性をほぐし、未来に向けて共に歩める「良きパートナー」へと変わっていくきっかけになればと願っています。この控えめな提案が、皆様のビジネスにとって何かしらの気づきとなれば幸いです。

下請け脱却と高収益化を実現する「AIコンテンツファクトリー」パートナー企業募集

この記事の監修者

藤井 聡|代表取締役

業務印刷の未来を探求し、中小製造業向けのALL IN ONEクラウドERPやAIO向けLP制作ツールをリリース。2019年に社内の事務職ゼロを達成し、クラウド実践大賞岡山大会で発表。京セラの稲盛和夫氏とゲーム作家の米光一成氏の手法を取り入れた会社の仕組みづくりを推進中。

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